「外国人材は、数年働いたら母国へ帰るもの」
もし、企業の採用担当者や教育担当者が、今もそう考えているなら、少し考え方を変える必要があるかもしれません。
現在、日本で暮らし、働く外国人材は大きく増えています。
2025年末時点で、日本に在留する外国人は412万5,395人となり、初めて400万人を超えました。また、特定技能制度をはじめ、日本で中長期的に働く外国人材も増加しています。
外国人材の日本での働き方は、少しずつ変わり始めています。
かつては、
「日本で数年間働いて、母国へ帰る」
という「出稼ぎ型」の働き方が、外国人材の一般的なイメージとして語られることがありました。
しかし、現在はどうでしょうか。
「日本で働き続けたい」
「日本語をもっと上達させたい」
「日本でキャリアアップしたい」
「日本で家族と暮らしたい」
そう考える外国人材が、確実に増えています。
つまり企業にとって、外国人材はもはや「一時的な労働力」ではありません。
これからの会社を一緒につくる人材として、考える時代が来ています。
「数年働いて帰国する外国人材」という考え方は、もう古い?
もちろん、すべての外国人材が日本で長く働きたいと考えているわけではありません。
母国に帰ることを目標としている人もいます。
しかし、一方で日本での生活が長くなるほど、
- 日本語が上達する
- 日本の仕事の進め方が分かる
- 日本人の友人が増える
- 地域とのつながりが生まれる
- 日本でのキャリアが形成される
- 家族や将来の生活設計を日本で考えるようになる
という変化が起こります。
最初は「3年間だけ日本で働く」と考えていた人が、数年後には、
「もう少し日本で働きたい」
「この会社で長く働きたい」
「将来はリーダーになりたい」
と考えるようになることもあります。
これは、外国人材が「日本に来て働く人」から、「日本で生活し、キャリアを築く人」へ変化しているということです。
企業側も、採用時点から「いつまで働いてもらえるか」だけを考えるのではなく、
「この人が5年後、10年後にどのようなキャリアを歩めるのか」
を考える必要があります。
企業がまず変えるべきこと①「外国人材=一時的な人材」という意識を捨てる
外国人材の定着を考えるうえで、最も重要なのは企業側の意識です。
「どうせ数年で帰国する」
「特定技能1号だから長く働けない」
「外国人だから単純作業を任せればよい」
このような考え方が、外国人材の成長や定着を妨げる可能性があります。
外国人材から見れば、
「自分は会社にとって、ずっと働く仲間ではないのか?」
と感じてしまうかもしれません。
人は、自分の未来が見えない会社に、長く働き続けることは難しいものです。
日本人社員であれば、
「主任になれる」
「店長になれる」
「管理職になれる」
「専門職として成長できる」
といったキャリアを考えることができます。
しかし、外国人材には、その道筋が明確に伝えられていないケースがあります。
だからこそ企業は、
外国人材にも日本人社員と同じように「未来」を見せること
が重要です。
企業ができること②「外国人材のキャリアパス」を明確にする
外国人材の定着率を高めるためには、キャリアパスの見える化が非常に重要です。
例えば、飲食業であれば、
入社1年目
- 店舗業務を習得
- 日本語能力の向上
- 接客スキルの習得
2~3年目
- 新人教育を担当
- 発注業務を担当
- シフト管理を経験
4~5年目
- 店長候補
- 店舗責任者
- 複数店舗のサポート
その後
- エリアマネージャー
- 教育担当
- 外国人材採用担当
- 海外事業担当
このように、
「あなたは、この会社で将来こうなれる」
という道筋を見せることが大切です。
外国人材にとって、給与だけが仕事を選ぶ基準ではありません。
「自分が成長できるか」
「将来の可能性があるか」
という点も非常に重要です。
「長く働いてほしい」と考えるなら、企業側はまず、
「長く働いた先に、何があるのか」
を示さなければなりません。
企業ができること③日本語教育を「福利厚生」ではなく「投資」と考える
外国人材の定着において、日本語教育は非常に重要です。
しかし、日本語教育を、
「本人が自分で勉強するもの」
と考えている企業も少なくありません。
もちろん、本人の努力は大切です。
しかし、企業側が日本語を学ぶ環境を提供することで、外国人材の成長スピードは大きく変わります。
例えば、
- 業務で使う日本語の研修
- 接客用語の研修
- 敬語研修
- 読み書きの研修
- 日本人社員との会話機会
- 日本語能力試験の受験支援
などが考えられます。
特に重要なのは、単に「日本語を勉強してください」と言うのではなく、
「この仕事で必要な日本語」を教えること
です。
外国人材からすれば、
「日本語能力試験では合格したのに、職場の会話が分からない」
ということもあります。
反対に、
「職場で使う言葉が分かるようになった」
「お客様と会話できるようになった」
という実感があれば、仕事への自信にもつながります。
日本語教育は、単なる教育ではありません。
業務品質の向上、コミュニケーションの改善、そして定着率向上につながる企業投資です。
企業ができること④「生活面のサポート」を充実させる
外国人材が日本で働き続けるためには、仕事だけではなく、生活の安定も重要です。
外国人材が困っているのは、必ずしも仕事のことだけではありません。
例えば、
- 病院の利用方法が分からない
- 市役所の手続きが分からない
- ゴミ出しのルールが分からない
- 住居契約が分からない
- 税金や年金の仕組みが分からない
- 災害時にどう行動すればよいか分からない
といった問題があります。
日本人にとっては当たり前のことでも、外国人材にとっては初めての経験です。
この「生活の不安」が積み重なると、
「日本で生活するのは大変だ」
という気持ちにつながってしまう可能性があります。
そこで企業が、
- 生活オリエンテーション
- 定期的な面談
- 相談窓口
- 病院や行政手続きのサポート
- 生活ルールの多言語説明
などを行うことで、外国人材の安心感は大きく変わります。
働き続けたいと思える環境は、職場だけでつくられるものではありません。
生活全体を支えることが、長期定着につながります。
企業ができること⑤「外国人材を特別扱いしすぎない」
外国人材を大切にすることは重要です。
しかし、過度な「特別扱い」は、逆効果になることもあります。
例えば、
「外国人だから、この仕事は任せない」
「外国人だから、責任ある仕事は難しい」
という扱いは、外国人材の成長機会を奪ってしまいます。
一方で、
「外国人だから、何でも特別に配慮する」
ということも、職場内の不公平感につながる可能性があります。
重要なのは、
必要な配慮は行いながら、成長の機会は平等に与えること
です。
外国人材だからといって、最初から可能性を限定してはいけません。
「あなたも店長を目指せる」
「あなたもリーダーになれる」
「あなたも会社の中心メンバーになれる」
というメッセージを伝えることが重要です。
外国人材が本当に求めているのは、特別扱いではなく、
努力や能力を正しく評価されること
なのかもしれません。
企業ができること⑥「帰国する可能性」ではなく「戻ってくる可能性」も考える
外国人材が、将来的に母国へ帰国することもあるでしょう。
しかし、帰国したら関係が終わるとは限りません。
例えば、
- 母国の現地法人で働く
- 海外事業の担当になる
- 日本と母国の架け橋になる
- 新たな人材を紹介する
- 海外の取引先との関係構築を担う
という可能性もあります。
日本で働いた経験を持つ外国人材は、企業にとって大きな財産です。
一度退職したとしても、
「また日本で働きたい」
「もう一度この会社で働きたい」
と思ってもらえる会社であれば、将来的な再雇用の可能性も生まれます。
これからの外国人材雇用では、
「退職したら終わり」ではなく、「人生を通じた関係をつくる」
という考え方も重要になっていくでしょう。
外国人材が「この会社で働き続けたい」と思う会社とは?
外国人材が長く働きたいと思う会社には、共通点があります。
それは、必ずしも給与が一番高い会社とは限りません。
もちろん、適正な給与や待遇は重要です。
しかし、それだけではありません。
外国人材が、
「自分のことを見てくれている」
「頑張れば成長できる」
「困ったときに相談できる」
「将来の可能性がある」
「この会社の仲間だと思える」
と感じられる会社であることが重要です。
つまり、外国人材の定着に必要なのは、
採用の強化ではなく、採用後の関係づくり
なのです。
まとめ:「人材を採用する」から「人生を共にする」へ
日本で働く外国人材は、今後も増えていくことが予想されます。
2025年末時点で、日本の在留外国人数は過去最多となり、400万人を超えました。外国人材をめぐる環境は、確実に「一時的な労働力を受け入れる時代」から「日本社会の一員として共に働く時代」へ変化しています。
「出稼ぎ」という言葉で外国人材を一括りにする時代は、もう終わりつつあるのかもしれません。
これからの外国人材は、
日本で働き、生活し、成長し、キャリアを築く人材
です。
企業ができることは、決して難しいことばかりではありません。
- 将来のキャリアを示す
- 日本語を学ぶ環境をつくる
- 生活面をサポートする
- 能力に応じた仕事を任せる
- 定期的に話を聞く
- 一人の社員として向き合う
こうした積み重ねが、
「この会社で働き続けたい」
という気持ちにつながります。
これからの外国人材採用で重要なのは、
「何人採用できるか」ではありません。
「何人の外国人材が、この会社で働き続けたいと思えるか」
です。
人手不足の時代だからこそ、企業が選ばれる時代になっています。
外国人材を「採用する」のではなく、
「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる会社をつくる。
それが、これからの外国人材雇用における最大の採用戦略になるのではないでしょうか。