「特定技能外国人は、今どの分野で増えているのか?」
外国人材の採用に関わる企業にとって、この数字は単なる統計ではありません。
どの業界で外国人材の採用ニーズが高まっているのか。
どの分野が受入れ上限に近づいているのか。
これから採用を始める企業に、どのような選択肢が残されているのか。
2026年7月、出入国在留管理庁から、**令和8年3月末時点の「特定技能1号の分野ごとの受入れ見込数及び在留者数」**が公表されました。
今回のデータで、特定技能1号の在留者数は404,527人となり、受入れ見込数805,700人に対する充足率は**50.2%**となっています。
つまり、特定技能制度は今まさに「外国人材の受入れ拡大期」にある一方、分野によっては受入れ上限が目前に迫っている状況です。
まずは全体像!特定技能1号は40万人を突破
令和8年3月末時点の特定技能1号の全体像は以下のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 受入れ見込数 | 805,700人 |
| 在留者数 | 404,527人 |
| 受入れ見込数の充足率 | 50.2% |
この数字だけを見ると、「まだ半分」と感じるかもしれません。
しかし、注意すべきなのは分野ごとの成長スピードが大きく異なることです。
たとえば、外食業は充足率95.4%に達しています。
一方で、自動車運送業や鉄道、宿泊などは、まだ受入れ見込数に対して大きな余地があります。
つまり、これからの外国人採用は、
「特定技能ならどの分野でも採用できる」
という時代から、
「どの分野で、いつ、どのように採用するか」
を考える時代へと変わりつつあります。
【一覧】特定技能1号の分野別受入れ見込数・在留者数
令和8年3月末時点の主な数値は以下のとおりです。
| 分野 | 受入れ見込数 | 在留者数 | 充足率 |
| 介護 | 126,900人 | 74,745人 | 58.9% |
| ビルクリーニング | 32,200人 | 9,202人 | 28.6% |
| リネンサプライ | 4,300人 | ― | ― |
| 工業製品製造業 | 199,500人 | 59,038人 | 29.6% |
| 建設 | 76,000人 | 51,055人 | 67.2% |
| 造船・舶用工業 | 23,400人 | 11,471人 | 49.0% |
| 自動車整備 | 9,400人 | 4,925人 | 52.4% |
| 航空 | 4,900人 | 2,577人 | 52.6% |
| 宿泊 | 14,800人 | 2,207人 | 14.9% |
| 自動車運送業 | 22,100人 | 333人 | 1.5% |
| 鉄道 | 2,900人 | 59人 | 2.0% |
| 物流倉庫 | 11,400人 | ― | ― |
| 農業 | 73,300人 | 39,950人 | 54.5% |
| 漁業 | 14,800人 | 4,842人 | 32.7% |
| 飲食料品製造業 | 133,500人 | 96,367人 | 72.2% |
| 外食業 | 50,000人 | 47,714人 | 95.4% |
| 林業 | 900人 | 8人 | 0.9% |
| 木材産業 | 4,500人 | 34人 | 0.8% |
| 資源循環 | 900人 | ― | ― |
※出入国在留管理庁公表の令和8年3月末時点速報値。新たに追加された分野など、統計上「―」となっている項目があります。
衝撃の95.4%!外食業は「受入れ上限」が目前に
今回の統計で最も注目すべき分野の一つが、外食業です。
外食業の状況
- 受入れ見込数:50,000人
- 在留者数:47,714人
- 充足率:95.4%
すでに受入れ見込数の95%を超えています。
実際、出入国在留管理庁は、令和8年3月27日、外食業分野の特定技能1号在留者数が受入れ見込数を超えることが見込まれるため、在留資格認定証明書の交付を一時的に停止する方針を示しました。
これは、外食業界にとって非常に大きな意味を持ちます。
これまで、
「人手不足だから外国人材を採用しよう」
と考えていた企業が、今後は、
「受入れ上限の状況を確認しながら採用計画を立てる」
必要が出てくるからです。
飲食店における外国人材採用は、これまで以上に採用のタイミングと採用ルートの選択が重要になります。
飲食料品製造業も充足率72.2%に到達
飲食料品製造業も、すでに高い水準に達しています。
- 受入れ見込数:133,500人
- 在留者数:96,367人
- 充足率:72.2%
飲食料品製造業では、年間増加数も20,509人と大きく、特定技能外国人の受入れが継続的に拡大しています。
食品工場などでは、
- 製造ライン
- 加工
- 包装
- 衛生管理
- 原料処理
など、人材不足が深刻な現場が多くあります。
今後、外国人材の採用を検討する企業にとっては、採用競争がさらに激しくなる可能性がある分野といえるでしょう。
介護分野は年間26,332人増加!最大級の採用市場へ
介護分野の在留者数は74,745人。
受入れ見込数126,900人に対して、充足率は58.9%です。
注目すべきは、年間増加数です。
令和7年3月末から令和8年3月末までの1年間で、介護分野の特定技能1号在留者数は26,332人増加しました。
今回公表された分野の中でも、非常に大きな増加となっています。
高齢化が進む日本において、介護人材の不足は今後も大きな課題です。
特定技能外国人の採用を検討する介護事業者にとっては、採用活動だけではなく、
- 日本語教育
- 介護技術教育
- 生活支援
- キャリア形成
- 長期定着
までを一体的に考えることが重要になります。
「採用したら終わり」ではなく、長く働いてもらう仕組みづくりが、今後の介護人材戦略の鍵となるでしょう。
宿泊業は充足率14.9%!これから大きく伸びる可能性
宿泊分野の在留者数は2,207人。
受入れ見込数14,800人に対して、充足率は14.9%です。
特定技能1号の中では、まだ大きな受入れ余地がある分野です。
観光客の増加や宿泊施設の人手不足を背景に、
- 客室清掃
- 接客
- レストランサービス
- 館内サービス
などの人材ニーズは今後も高まることが予想されます。
外国人材採用をこれから始める宿泊事業者にとっては、今後の採用市場拡大が期待される分野といえるでしょう。
新分野にも注目!自動車運送業・鉄道・物流倉庫・リネンサプライなど
今回の統計では、近年追加された新しい分野にも注目が集まります。
特に、
自動車運送業
受入れ見込数22,100人に対して、在留者数は333人。
充足率はわずか1.5%です。
鉄道
受入れ見込数2,900人に対して、在留者数は59人。
充足率は2.0%です。
これらの分野は、まだ制度開始後の受入れ人数が少ないため、今後の制度運用や採用環境の変化が注目されます。
また、令和8年1月からは、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環などの新たな分野も受入れ対象に加わっています。
今後は、
「飲食店だけ」
「工場だけ」
「介護だけ」
ではなく、さまざまな業界で特定技能外国人の採用が進む可能性があります。
受入れ上限に余裕がある=採用しやすい、ではない
ここで注意したいポイントがあります。
受入れ見込数の充足率が低いからといって、必ずしも採用が簡単になるわけではありません。
たとえば、ビルクリーニング分野は充足率28.6%です。
しかし、実際の採用現場では、
- 日本語能力
- 勤務時間
- 夜勤対応
- 地域
- 賃金
- 住居
- 他社との採用競争
など、さまざまな条件が関係します。
つまり、今後の外国人材採用では、
「制度上、何人受け入れられるか」
だけではなく、
「実際に採用でき、定着してもらえる環境を作れるか」
が重要になります。
企業が今すぐ確認すべき3つのポイント
1.自社の分野の受入れ上限を確認する
まずは、自社が属する分野の受入れ見込数と現在の在留者数を確認しましょう。
特に外食業や飲食料品製造業のように、充足率が高い分野では、今後の制度変更や受入れ状況に注意が必要です。
2.採用計画を「人数」だけで考えない
外国人材採用では、
「今年は10人採用する」
だけでは不十分です。
重要なのは、
- どの国籍を採用するのか
- どの地域から採用するのか
- どのような日本語能力が必要か
- どの業務を任せるのか
- どのようなキャリアを描いてもらうのか
まで考えることです。
3.採用競争が激しくなる前に動く
特定技能外国人の在留者数は、すでに40万人を超えています。
今後、外国人材の採用を始める企業が増えれば、優秀な人材の獲得競争も激しくなる可能性があります。
だからこそ、
「人が足りなくなってから採用する」
のではなく、
「人が足りなくなる前に採用の仕組みを作る」
ことが重要です。
特定技能外国人材の採用は「早い者勝ち」から「選ばれる企業」へ
今後の外国人材採用で重要になるのは、単に求人を出すことではありません。
外国人材から、
「この会社で働きたい」
と思ってもらえる企業になることです。
そのためには、
- 給与水準
- 職場環境
- キャリアアップ
- 日本語学習支援
- 生活支援
- 相談体制
- 将来の在留資格
などを総合的に整備する必要があります。
特定技能外国人は、単なる「人手不足を埋める労働力」ではありません。
企業の将来を支える人材として採用し、育成し、定着してもらうことが、これからの外国人材活用の基本となります。
まとめ|特定技能1号は「次のステージ」へ
令和8年3月末時点で、特定技能1号の在留者数は404,527人となりました。
今回の統計から見えてくるのは、特定技能制度が急速に拡大しているという事実です。
一方で、分野によって状況は大きく異なります。
外食業のように受入れ上限に近づく分野がある一方、宿泊、ビルクリーニング、自動車運送業、鉄道など、今後の拡大が期待される分野もあります。
これからの外国人材採用で大切なのは、
「特定技能外国人を採用できるか」ではなく、
「どの分野で、どの人材を、どのように採用し、どう定着させるか」
を考えることです。
特定技能制度は、今まさに大きな転換期を迎えています。
「まだ採用していない企業」も、
「すでに採用している企業」も、
今こそ自社の外国人材戦略を見直すタイミングなのかもしれません。
※本記事の在留者数等は、出入国在留管理庁が公表した令和8年3月末時点の速報値に基づいています。速報値であるため、今後確定値に変更される可能性があります。