特定技能の外国人、5年で82万人に拡大 政府が閣議決定

政府は29日、「特定技能」外国人の受け入れ枠の上限数や分野の追加について閣議決定した。2024年度から5年間の上限をこれまでの2倍超となる82万人に設定し、新たに自動車運送業、鉄道など4分野を追加した。人手不足が深刻な多くの分野で特定技能が不可欠な存在になっている。

特定技能制度の運用に関する基本方針などを改定した。受け入れ上限の増加に伴い受け入れ企業の責務を明確にした。外国人の安定的な在留活動を確保するとともに、地域での外国人との共生社会の実現に寄与する責務があると示した。

政府は閣議に先立ち、首相官邸で外国人の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議を開いた。林芳正官房長官は企業の責務に関し「受け入れ見込み数の拡大に伴い地域住民が不安を抱く恐れなどが懸念されることを踏まえた」と説明した。

特定技能は人手不足分野に限り、一定の専門性を持つ外国人労働者を受け入れる制度として19年に始まった。23年末時点で20万人ほどいる。5年間ごとに受け入れ枠の上限を設定し、3月末で期限を迎える。

上限は業界ごとに成長率や5年後の需要などから不足人数をはじき、人材確保や生産性向上の努力で解決できる分を差し引いて算出した。

これまでの介護や飲食料品製造業などの12分野から4分野を追加して計16分野となる。新たに追加されるタクシーやバス、鉄道などの分野では受け入れ体制を整える必要がある。

運転手や車掌業務では安全管理やコミュニケーションで高い能力が必要となる。このため試験や研修などの充実で対応を図る。

バスやタクシーは事故発生時の対応や高齢者や車椅子の乗客への対応も試験項目にする。鉄道運転士などは専門用語や異常時の乗客アナウンス、指令員との連絡なども盛り込む。求める日本語能力も他の分野より厳しい日本語能力試験N3以上を求める。

試験に合格して入国後、必要になる免許の取得などのために最長1年間の研修期間を設ける。

介護や飲食料品製造業などの既存分野も大幅に受け入れ数が増える。19年当初に設定した人数と比べ、介護は6万人から13万5000人に、飲食料品製造業は3万4000人から13万9000人に受け入れ枠をそれぞれ拡大する。

今回の決定により、特定技能と非熟練労働者の技能実習の受け入れ分野がほぼそろった。例えば繊維工業はこれまでは技能実習しか認めていなかったが、追加されることになった。外国人労働者が特定技能に移行しやすくなった。

今後は各省庁で省令・告示の公布や試験作成などの作業に移る。技能実習から移行したり、海外で試験を受けて入ってきたりするなどの方法で準備が整い次第受け入れが始まる。

 

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