特定技能外国人の受け入れ枠に迫る上限――「飲食料品製造業」「建設」も採用計画に影響

「特定技能なら、まだ外国人材を採用できる」

そう考えている企業は、少し注意が必要です。

特定技能外国人の受け入れは、各分野で無制限に増やせるわけではありません。政府は、人手不足の状況などを踏まえて分野ごとに「受入れ見込数」を設定しており、これが実質的な受入れ上限として機能しています。

そして今、その上限に近づいている分野があります。

特に注目したいのが、**「飲食料品製造業」と「建設」**です。

2026年6月末時点の最新データでは、飲食料品製造業の特定技能1号在留者は100,769人、建設は52,132人。受入れ見込数に対する充足率は、それぞれ**75.5%、68.6%**まで上昇しています。

つまり、外国人材の採用を「必要になったら考える」という姿勢では、今後、採用したいタイミングで採用できない可能性が出てきています。


「受入れ上限」は、なぜ存在するのか?

特定技能制度では、日本国内の人手不足を補うことを目的として、一定の分野で外国人材の受入れを進めています。

一方で、外国人材を際限なく受け入れる制度ではありません。

政府は、各産業における将来の人手不足数を推計し、

  • 生産性向上
  • AI・ロボットなどの導入
  • 国内人材の確保
  • 賃金・待遇改善

などによって補える人数を差し引いたうえで、外国人材の「受入れ見込数」を設定しています。

そのため、この数字は単なる「目標人数」ではなく、制度上の重要な上限として考える必要があります。

実際、外食業ではすでにこの問題が現実になりました。


外食業では「受入れ停止」が現実に

2026年、特定技能の「外食業分野」では、受入れ上限への到達が大きな問題となりました。

外食業では、2026年2月末時点で特定技能1号の在留者数が約4万6,000人となり、受入れ見込数である5万人を同年5月頃に超えることが見込まれたため、出入国在留管理庁は在留資格認定証明書の交付を一時的に停止する対応方針を示しました。

そして現在、外食業の受入れ上限に対する充足率は**98.1%**に達しています。

ここで重要なのは、

「上限に近づく」

「採用しにくくなる」

「制度上の対応が必要になる」

という流れが、すでに現実に起きていることです。

では、次に注意すべき分野はどこなのでしょうか。


注目すべきは「飲食料品製造業」

現在、特に注目したいのが飲食料品製造業です。

2026年6月末時点で、特定技能1号の在留者数は100,769人

受入れ見込数は133,500人で、充足率は**75.5%**に達しています。

さらに、JITCO(国際人材協力機構)が2026年9月に公表した整理でも、飲食料品製造業の充足率は75%を超えており、外食業、建設、介護などと並んで高い水準にあることが示されています。

つまり、

「まだ25%くらい残っている」

と考えるのではなく、

「すでに4分の3が埋まっている」

と考えるべき段階に入っています。

特に食品工場などでは、人手不足を背景に外国人材への依存度が高まっています。

今後も採用ニーズが続けば、受入れ枠の消化がさらに進む可能性があります。


「建設」も決して他人事ではない

もう一つ注意したいのが、建設分野です。

2026年6月末時点で、建設分野の特定技能1号在留者は52,132人

受入れ見込数は76,000人で、充足率は**68.6%**となっています。

建設分野では、2024年度から2028年度までの5年間で、特定技能1号の受入れ見込数を76,000人と設定しています。これは同期間における1号特定技能外国人の受入れ上限として運用されます。

建設業界では、

  • 職人不足
  • 高齢化
  • 若年層の入職不足
  • 2024年からの時間外労働規制
  • インフラ整備・維持管理需要

など、慢性的な人手不足が続いています。

そのため、今後も外国人材の採用需要が高い状態が続くと考えられます。

「建設だからまだ余裕がある」

と判断するのは早いでしょう。


受入れ枠が埋まると、企業はどうなる?

ここは採用担当者にとって非常に重要なポイントです。

受入れ見込数を超えることが見込まれる場合、関係法令に基づき、在留資格認定証明書の交付を一時的に停止するなどの措置が取られることがあります。

つまり企業側からすると、

「採用したい人がいる」
「本人も日本で働きたい」
「会社も受け入れる準備ができている」

という状況でも、制度上の受入れが難しくなる可能性があります。

これは企業にとって非常に大きなリスクです。

採用活動は、求人を出してから人材を探すだけではありません。

海外人材の場合、

募集 → 面接 → 内定 → 日本語教育 → 技能試験 → 在留資格申請 → 入国 → 受入れ教育

など、長い準備期間が必要になります。

だからこそ、「上限に達してから考える」のでは遅いのです。


「採用人数」だけでなく「採用時期」を考える

これからの外国人材採用で重要になるのは、

「何人採用するか」だけではありません。

むしろ、

「いつ採用するのか」

が重要になります。

例えば、

「来年、人手が足りなくなったら5人採用しよう」

という計画を立てていたとしても、その時点で受入れ枠が大幅に消化されていれば、予定通り採用できるとは限りません。

そこで必要になるのが、中長期的な採用計画です。

例えば3年間で考える

1年目:3名採用

2年目:3名採用

3年目:2名採用

というように、将来的な人員構成から逆算します。

「欠員が出たら採用」ではなく、

「欠員が出る前に育成を始める」

という考え方への転換が必要です。


「採用できるうちに採用する」は正しいのか?

ここで注意したいのが、

「上限が近いから、とにかく大量採用しよう」

という考え方です。

これは必ずしも正解ではありません。

外国人材を採用する以上、

  • 日本語教育
  • 技能教育
  • 生活支援
  • キャリア形成
  • 職場環境の整備
  • 既存社員とのコミュニケーション

など、受け入れ後の体制も重要だからです。

大量に採用しても、定着しなければ意味がありません。

これから求められるのは、

「採用数を増やす企業」ではなく、「採用した人材を長く活躍させる企業」

です。


特定技能2号まで見据えた「長期戦力化」が重要に

特定技能制度では、一定の分野で特定技能2号への移行が可能です。

飲食料品製造業も特定技能2号の対象分野です。

そのため、企業としては、

特定技能1号=人手不足を埋める人材

という考え方だけではなく、

特定技能1号 → 技能向上 → 現場リーダー → 特定技能2号 → 管理・教育人材

というキャリアを考えることが重要になります。

特に、外国人社員が数年後も会社で活躍できる環境を整えることは、採用競争が激しくなる時代において大きな差別化になります。


「採用」から「定着・育成」へ

今後の外国人材採用では、

「誰を採用するか」

だけではなく、

「採用した人材をどう育てるか」

が企業の競争力になります。

例えば、

入社1年目

日本語・業務習得

2~3年目

担当業務の習熟・後輩指導

3~5年目

リーダー候補・現場管理

その先

特定技能2号・管理者候補

というように、キャリアを見える化することが重要です。

外国人社員にとっても、

「この会社で働き続けると、自分はどう成長できるのか」

が分かれば、定着へのモチベーションにつながります。


今、企業がやるべき5つのこと

今回の受入れ枠の状況を踏まえ、企業には次の5つをおすすめします。

① 3~5年先の人員計画を作る

「今年何人必要か」だけではなく、

3年後、5年後に何人必要なのか

を考えます。


② 外国人材の採用時期を前倒しする

必要になってから採用するのではなく、

「必要になる前に採用・育成する」

という考え方に変えます。


③ 特定技能2号まで含めてキャリアを設計する

単純な労働力としてではなく、

将来のリーダー・管理者候補

として育成します。


④ 日本語教育を強化する

仕事を教えるだけではなく、

「指示を理解する」

「報告・連絡・相談をする」

「後輩を指導する」

といった段階まで日本語能力を引き上げることが重要です。


⑤ 採用だけでなく「定着率」をKPIにする

外国人材の採用人数だけを追うのではなく、

1年後、3年後に何人残っているか

を見ることが重要です。

採用競争が激しくなるほど、「採用力」だけでなく「定着力」が企業の競争力になります。


「外国人を採用する時代」から「選ばれる企業になる時代」へ

特定技能制度が始まった当初は、

「外国人材を採用できる企業になる」

こと自体に大きな意味がありました。

しかし、今は状況が変わっています。

外国人材を必要とする企業が増え、人気の高い分野では受入れ枠そのものが限られています。

つまり、今後は企業同士が、

「外国人材を採用する競争」

をするだけでなく、

「外国人材から選ばれる企業になる競争」

をすることになります。

給与、休日、福利厚生だけではありません。

  • 教育制度
  • キャリアアップ
  • 職場環境
  • 日本語支援
  • 生活支援
  • 特定技能2号へのステップ
  • 将来の管理職への道

こうした環境を整えている企業ほど、優秀な外国人材から選ばれやすくなります。


まとめ――「いつでも採用できる」は、もう当たり前ではない

特定技能の受入れ枠は、永遠に残っているわけではありません。

2026年6月末時点で、飲食料品製造業の充足率は75.5%、建設は**68.6%**まで上昇しています。

そして、外食業ではすでに受入れ上限への到達を背景とした対応が始まりました。

これは企業にとって、単なる「外国人材に関するニュース」ではありません。

自社の採用計画そのものを見直すタイミングが来ている

というサインです。

「人が足りなくなったら採用する」のではなく、

「3年後、5年後に必要な人材を今から採用し、育てる」

という発想へ。

そして、採用した外国人材を「短期的な人手不足の穴埋め」で終わらせず、将来のリーダー・管理者・会社の中核人材へ育てていく。

これからの外国人材活用で重要になるのは、まさにこの視点です。

受入れ枠が埋まる前に採用する。
採用したら、長く活躍できる環境をつくる。

この2つを同時に進めることが、これからの特定技能外国人材活用における大きなポイントになるでしょう。

出入国在留管理庁「特定技能制度」

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