「外国人材の採用コストが、また上がる?」
2026年10月1日から、在留資格の変更・在留期間の更新・永住許可などにかかる在留許可手数料が改定されます。
外国人材を採用している企業にとっては、「本人が支払う手数料だから、会社には関係ない」と考えてしまいがちな今回の改定。
しかし、本当にそうでしょうか?
実は今回の制度変更は、単純に「外国人本人の負担が増える」という話だけではありません。
企業側にも、
- 外国人社員の在留期限をより正確に管理する
- 更新手続きを早めに準備する
- オンライン申請を積極的に活用する
- 外国人社員のキャリア形成を考える
- 長期定着につながる環境を整える
といった取り組みが、これまで以上に求められるきっかけになる可能性があります。
今回は、2026年10月1日から始まる在留許可手数料の改定について整理しながら、外国人材を雇用する企業が今後取り組むべきことについて解説します。
1.2026年10月1日から何が変わる?
2026年10月1日から、「出入国管理及び難民認定法施行令」の改正に伴い、在留資格の変更、在留期間の更新、永住許可などにかかる手数料が改定されます。
大きなポイントは、在留期間に応じて手数料が変わる仕組みになることです。
オンライン申請の場合、2026年10月1日以降の申請では、在留資格変更・在留期間更新について、以下の手数料となります。
| 許可される在留期間 | 改定後手数料 |
|---|---|
| 3月以下 | 10,000円 |
| 3月超~6月以下 | 15,000円 |
| 6月超~1年未満 | 21,000円 |
| 1年 | 27,000円 |
| 1年超~3年未満 | 42,000円 |
| 3年以上~5年未満 | 56,000円 |
| 5年以上 | 65,000円 |
※オンライン申請の場合、別途決済手数料が発生します。
これまで、在留資格変更・在留期間更新のオンライン申請では5,500円だったため、今回の改定は企業・外国人社員双方にとって無視できない変更と言えるでしょう。
2.「10月1日から値上げ」だけではない。重要なのは申請日
今回、企業の人事担当者が特に注意したいのが、**「いつ許可されたか」ではなく「いつ申請したか」**という点です。
出入国在留管理庁によると、
2026年9月30日までに申請した場合
→ 10月1日以降に許可されても、改定前の手数料
2026年10月1日以降に申請した場合
→ 改定後の手数料
となります。
つまり、
「10月になってから考えればいい」
ではなく、現在雇用している外国人社員について、在留期限と更新時期を今のうちから確認することが重要です。
人事担当者は、外国人社員ごとに、
「在留期限はいつなのか?」
「更新申請はいつ頃必要なのか?」
「誰が手続きをサポートするのか?」
を一覧化しておくと安心です。
3.企業にとって「手数料値上げ」以上に重要なポイント
今回の改定で注目したいのは、単なる料金変更だけではありません。
出入国在留管理庁は、今回の手数料引き上げについて、出入国・在留管理に関する施策の強化・拡充に必要な費用について、在留外国人にも相応の負担を求める考えを示しています。
また、増収分を活用し、
- 出入国在留管理行政のDX推進
- 難民等への適切・迅速な保護、支援
- 不法滞在者ゼロプランの推進
- 外国人が日本語や制度・ルール等を学ぶプログラム
- 情報発信・相談体制の強化
- 外国人の受入れ・秩序ある共生に向けた取り組み
などを進める方針が示されています。
ここから見えてくるのは、
「外国人を受け入れる」だけではなく、「日本社会の中で適切に生活・就労し、長く活躍してもらう」ことが、これまで以上に重要になる
という流れです。
企業側も、この変化に合わせて外国人材の受け入れ方を考えていく必要があります。
4.これからの外国人材採用は「採用して終わり」ではない
外国人材の採用を、
「人手不足だから採用する」
という考え方だけで進めている企業は、今後さらに見直しが必要になるでしょう。
外国人社員が日本で働き続けるためには、
採用 → 入社 → 教育 → 定着 → キャリア形成 → 長期活躍
という一連の流れを考える必要があります。
特に重要なのが、
「在留資格」と「キャリア」をセットで考えること
です。
例えば特定技能で採用した外国人材についても、
「今の仕事をしてもらえればいい」
ではなく、
「将来的にどのような仕事を任せるのか」
「どのようなスキルを身につけてもらうのか」
「将来的に特定技能2号を目指すのか」
など、長期的なキャリアを企業と本人で共有しておくことが重要です。
5.外国人社員の「在留期限管理」を会社の仕組みにする
外国人材を複数名雇用している企業ほど、個人任せの管理は危険です。
例えば、
「本人から更新の相談が来たら対応する」
という方法ではなく、
会社側で在留期限を管理する仕組み
を作ることをおすすめします。
具体的には、
- 外国人社員の在留期限一覧を作成
- 更新時期の3~6か月前に確認
- 必要書類を事前に案内
- 本人と人事担当者で更新スケジュールを共有
- 必要に応じて登録支援機関・専門家等と連携
- 更新後の在留カード情報を確認
といった運用です。
特に人数が増えてくると、
「誰の在留期限がいつなのか分からない」
という状態そのものが、企業にとって大きなリスクになります。
6.オンライン申請を「コスト削減」だけで考えない
今回の改定では、オンライン申請について重要な変更があります。
2026年10月1日以降、オンライン申請の手数料納付方法は、従来の収入印紙から、コンビニ決済または銀行決済へ変更されます。
銀行決済では、インターネットバンキングを利用することでキャッシュレスで支払うことも可能です。
また、オンライン申請は窓口申請より手数料が低く設定される仕組みとなっています。これは、申請者の利便性向上や窓口混雑の緩和、オンライン申請の促進を目的としています。
企業としては、
「外国人社員本人に任せる」
のではなく、
「会社としてオンライン申請を含めた手続きをサポートできる体制を整える」
ことが、今後ますます重要になってくるでしょう。
7.外国人社員に「手数料が上がる」と伝えるだけでは不十分
今回の改定について、企業が外国人社員に、
「10月から在留資格更新の費用が上がります」
とだけ伝えるのは、少しもったいない対応です。
なぜなら、外国人社員からすると、
「なぜ上がるの?」
「会社はサポートしてくれるの?」
「自分はいくら払うの?」
「更新手続きはどうすればいいの?」
という疑問が生まれるからです。
そこで重要なのが、
「制度変更の説明+会社としてのサポート」
です。
例えば、
「2026年10月1日から在留手数料が改定されます。会社としても制度変更を確認し、更新時期や必要書類について早めにサポートします。」
と伝えるだけでも、社員の安心感は大きく変わります。
外国人材の定着には、給与だけでなく、
「会社が自分を支えてくれている」
という安心感も大きく影響します。
8.「長く働いてもらう」ことが、企業にとって最大のコスト対策
今回の手数料改定によって、外国人材1人ひとりにかかる在留関連コストが増える可能性があります。
しかし、本当に考えるべきなのは、
数万円の手数料をどう抑えるかだけではありません。
むしろ企業にとって大きなコストとなるのは、
- 採用費
- 人材紹介費
- 渡航費
- 教育費
- 生活支援費
- 現場教育の時間
- 退職による人員不足
- 再採用にかかる費用
などです。
外国人社員が短期間で退職してしまえば、企業は再び採用活動を行わなければなりません。
だからこそ、
「在留手続きのコストを抑える」よりも、「外国人材が長く働ける環境を作る」ことのほうが、企業にとって大きな経営課題
なのです。
9.これから企業が取り組むべき「5つのこと」
今回の制度変更をきっかけに、企業では次の5つをチェックしてみてはいかがでしょうか。
① 外国人社員の在留期限を一覧化する
まずは、
「誰がいつまでの在留資格なのか」
を会社として把握しましょう。
Excelやクラウドなどを活用し、更新時期をアラートできる仕組みにするのも有効です。
② 更新手続きを早めに準備する
期限ギリギリになってから準備するのではなく、必要書類や本人情報を早めに確認しましょう。
特に複数名を雇用している企業では、更新時期が集中すると人事担当者の負担も大きくなります。
③ オンライン申請の活用を検討する
2026年10月1日からオンライン申請の手数料納付方法も変更されます。
自社で対応できる手続きについては、オンライン申請の活用を検討することで、社員・企業双方の負担軽減につながる可能性があります。
④ 外国人社員への説明を丁寧に行う
制度変更を日本語だけで伝えるのではなく、必要に応じて外国人社員が理解しやすい言語で説明することも重要です。
「制度を理解してもらう」ことは、手続きミスを防ぐだけでなく、会社への安心感にもつながります。
⑤ キャリアプランを一緒に考える
そして、最も重要なのがこれです。
「この会社で、これからどう成長していくのか?」
を外国人社員と一緒に考えることです。
例えば、
入社1年目
→ 日本語・業務スキルを身につける
2~3年目
→ 後輩の指導を担当
3~5年目
→ リーダー・管理業務へ
その先
→ 特定技能2号など、より長期的なキャリアを目指す
というように、将来像を見える化します。
外国人材にとって、
「この会社で頑張った先に何があるのか」
が分かることは、定着において非常に重要です。
10.「手数料値上げ」を外国人材活用のチャンスに変える
今回の制度改定を、
「外国人を雇うとお金がかかるようになった」
と捉えるだけでは、企業にとってマイナスのニュースで終わってしまいます。
しかし、視点を変えてみましょう。
今回の改定をきっかけに、
在留管理を見直す。
外国人社員への説明を見直す。
教育制度を見直す。
キャリアプランを見直す。
定着施策を見直す。
そうすれば、単なる「手数料改定」が、外国人材活用を一段階進化させるきっかけになります。
まとめ|外国人材の「採用」から「定着・戦力化」へ
2026年10月1日から、在留資格の変更・在留期間更新・永住許可などに関する手数料が改定されます。
また、オンライン申請では、手数料の納付方法も収入印紙からコンビニ決済・銀行決済へ変更されます。
企業にとって重要なのは、
「いくら値上がりするのか」だけを見ることではありません。
今回の制度変更をきっかけに、
外国人材を「採用する人」から「長く活躍してもらう人」へ。
という考え方に変えていくことです。
人手不足が続く日本において、外国人材は単なる「労働力」ではありません。
教育を行い、キャリアを描き、会社の一員として長く活躍してもらうことで、企業の将来を支える人材になり得ます。
だからこそ、これからの外国人材雇用で重要になるのは、
「採用人数」ではなく「定着率」。
「入社させること」ではなく「成長してもらうこと」。
「短期的な人手不足解消」ではなく「長期的な戦力化」。
ではないでしょうか。
今回の在留許可手数料改定を、単なる「コスト増」と捉えるのではなく、外国人材の受け入れ体制とキャリア形成を見直すチャンスとして活用していきましょう。
※本記事は2026年9月時点で出入国在留管理庁が公表している情報をもとに作成しています。実際の申請にあたっては、最新の出入国在留管理庁の案内をご確認ください。